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青年は、その志を以て、故郷を興さねばなりません。愛する人の住むこの国が、永劫に華やかであるために、我々は努力を惜しんではなりません。人類への奉仕が、人生最善の仕事なのです。その為に、高い資質を身に付け、堂々と歩む青年経済人の育成こそが、青年会議所の担いであると考えます。会員資質の向上を軸に、地域への奉仕を通し、地域発展の原動力たる青年としての、修練を積むことが、本年のテーマであります。


曼珠沙華どれも腹出し秩父の子

これは郷里秩父の子どもたちに対する親しみから思わず、それこそ湧くように出来た句。休暇をとって秩父に帰った時、腹を丸出しにした子どもたちが曼珠沙華のいっぱい咲く畑径をはしってゆくのに出会った、そのときのもので、小さい頃の自分の姿を思い出したのか、と言ってくれる人がいるが、そこまでは言っていない。しかし子供のころの自分ととっさに重なったことは間違いなく、ああ秩父だなあ、と思ったことに間違いはない
金子兜太 句集 「少年」より


この風景を想うとき、故郷ちちぶが、胸いっぱいに広がる事と思います。故郷を同じくする我々は、誰しもが、実際のちちぶの風景で、子ども達の姿がイメージ出来るのではないでしょうか。コンピュータースクリーンの中で見たよその畑径ではなく、ちちぶの畑径が、我々の故郷なのです。

豊かに残る自然と 誇るべき文化と

我々は、故郷に育てられました。花明かりすら感じさせる満開の桜。清らかなせせらぎ。色づく紅葉は峰々を賑わし、冬祭りの喧騒に心を躍らせました。神社やお寺は身近なものとして存在し、祭礼の空気の中には、気持ちの昂ぶりを抑える事の出来ない何かが含まれていました。昨今のちちぶ地域の現状を鑑みると、様々な弊害を感じずにはいられません。従前の規模を保つことは難しいかもしれません。苦労は多くなってしまうかもしれません。しかしながら、この故郷を、自然を、文化を、我々は守らなければならないのです。

ちちぶ地域には、数えきれない祭礼と、歌舞伎をはじめとする様々な郷土芸能が、連綿と受け継がれています。文化が育つ背景には、経済の強さが不可欠です。信越地域と江戸を結ぶ街道として、古くから町が栄え、繊維産業の隆盛により、更なる繁栄がこの地域の文化を支えてきました。ちちぶ地域の経済人たちは、自らの経済活動を強力に推し進めると共に、地域を愛する活動にも、力を注いできたのです。我々が経済活動を営むこのちちぶ地域の今があるのは、先人たちの弛みない努力があったからなのであります。
現代を生きる我々青年経済人も、先人たちに負けるわけには参りません。その為には、経済人としての個々の資質の向上が不可欠です。勢いのある企業、魅力ある商品やサービスを提供する商店。どちらにも、高い意識と熱意を持った人材がいるはずです。我々青年は、広く知識を求め、様々な経験を通し、多様な価値観を学ぶべきだと考えます。日々の暮らしを緩慢と過ごすのではなく、アンテナを張り、貪欲に行動し、経済人としての資質を高めることが重要なのです。
青年会議所の活動は、そのすべてを与えてくれます。与えてくれる機会を自ら作り出すと言った方が的確かもしれません。そもそも、青年会議所の担いとは、地域への奉仕を通し、地域を発展させる原動力たる青年としての修練を積み、その修練を通して、地域を共に支える仲間との友情を育む事であります。キーワードは、会員資質の向上と地域への奉仕です。本年はこの二つに主眼を置き、足音高く、運動を展開して参ります。


青年経済人育成

1963年、宮側町で行われた総会を経て、秩父青年会議所は創立されました。終戦から18年が経過した当時のちちぶには、広く、青年経済人の集う団体は無かったと聞いております。創成期を支えた先輩方は、受け継ぐ伝統の無い中で、その時代、その時を的確に捉え、何をすべきか、何をしなければならないのかを、一人ひとりが真剣に考え、運動を展開していたのだと思います。設立から55年。国際的な社会情勢の変動や国家的な価値観の移ろい、地域社会を構成する要素の変遷など、激流と呼べる変化の中にあっても、秩父青年会議所はその歴史を紡いで参りました。そこには常に、時代を考察し、志高く運動を行い、明るく豊かな社会の実現を目指す、先輩たちの姿があったのだと思います。
今、我々が期待されていることを、当の我々は、真剣に検証しているでしょうか。真剣に考えられるだけの要素を持ち合わせているでしょうか。未来を考えるには、過去を紐解き、現在を学ぶことが重要です。政治、文化、社会、経済問題をも研究し、時代を考察できる資質を身に付けることが急務であると考えます。また、その学びの場は、ちちぶ地域にとどまらず、広く見識を深められる場所を求め、外から、ちちぶ地域を俯瞰する事の出来る人材の育成にも力を注いで参ります。一年間という短い時間ではありますが、人に会い、話を聞き、現場を訪い、その目で見ることを通して、経済人としての、また、経営者としての資質の向上を図って参ります。


会員資質向上

国際青年会議所は、世界最大の青年団体です。国により、地域により、所属する会員のステータスは違いますが、青年会議所の会員である以上、同じフィールドで活動する機会があるかもしれません。国内においても然りですが、青年会議所の基本となる知識もなく、また一般的なビジネスマナーも知らないのでは、会員としての素養が問われてしまいます。55年の歴史を持ち、公益社団法人格を有する秩父青年会議所の会員としての在るべき姿を、皆さんはどのようにお考えでしょうか。身だしなみやマナー、スピーチの方法やディスカッションの巧みさなど、広く、世界に出ても恥ずかしくない社会性と、行儀作法を学ぶ場も提供して参ります。


青少年育成

地域の未来を考えるとき、青少年の健全育成が大きなテーマとして挙げられます。私たちがバトンを渡すのは、後ろから追いかけてくる、今はまだ小さな少年達です。無限の可能性を秘める次世代の子ども達を、自らの家族と同様に慈しみ、育て、時には叱り、時には励ましながら共に活動できる事業を展開致します。無限にある可能性の中から、実を結び、花が開くような種を見つけるまでには、たくさんの経験が必要です。我々の情熱と経験を駆使し、学校生活や家庭生活の中では経験できないような体験を提供して参ります。
情報伝達技術の発達や、地域コミュニティーの弱体化などにより、生まれた地域との結び付きが希薄になっている現状に一石を投じるために、自らの故郷で、知力と体力をフルに使って、一生懸命活動できる場を提供して参ります。この活動を通じて感じたことが、自分自身を見つめ、自らの故郷を省み、未来のちちぶ地域を創り、愛する、端緒になって欲しいと強く願います。


まちづくり

仕事と家庭が守れれば、十分と考える人が多いのは当然です。精力的に仕事をこなし、プライベートを充実させる人生に、異を唱えるつもりはありません。地域との繋がりがなくても、十分に楽しい毎日を過ごせるでしょう。しかし、地域に住まう一人でも多くの人が、貴重な自分の時間を、地域の為に使ったとしたら、劇的な変化が起こるのではないでしょうか。
自然を大切にする活動も、伝統文化を継承する活動も、携わる人が多ければ多いほどメリットがあるのです。ちちぶ地域は、伝統的に地域に根差した活動が活発です。それでも、人口の減少に伴い、その活動が制限されているのが現実です。今まで地域に背を向けていた人たちを、振り向かせ、一歩踏み出させるには、どうしたらいいのでしょうか。

我々が背中を見せるのです。十分な考えに裏打ちされた運動を溌剌と行い、青年一人の行動が、自分の住む地域を活性化させるその様を、地域の皆さんに見て頂くのです。意識を地域に向けてもらう事が第一歩です。楽しさを提供するだけでもいいかもしれません。我々の活動で何かを感じて貰えたら、次なる一歩が見えてくるかもしれないのですから。たくさんの人たちを巻き込み、地域のための活動を展開し、郷土への愛を育む。これこそが、地域の未来を創るという事なのです。目指すのは、地域とJCの強い結びつき。愛する故郷に、愛されるJC。本年は、そんな運動をまちづくりと呼びたいと思います。


会員拡大について

いつの時代にも、果敢な運動を展開する事が出来たのは、常に、志高く議論を行い、率先垂範を実行してきた会員の力があったからであります。数多の会員が、肝胆相照らす中で、事業を構築し、地域のために運動をしてきたのです。会員の数は、青年会議所の力です。在籍年数は様々ながら、40歳で卒業を迎える我々の組織において、会員の拡大は、至上命令であると言っても過言ではありません。愛する地域を想い、より良い故郷を次世代に引き継ぐ為に、一人でも多くのなかまを迎え入れる必要があるのです。当会の会員は、経営者や、後継者が多いのが特徴ではありますが、過去を紐解くと、公務員や、会社員など、多様なステータスの青年が在籍していました。入会に年齢以外の制限はありません。自らを鍛え、愛する地域を興す志だけあれば、我々はなかまとして迎え入れる準備があるのです。本年度は、会員全員が、それぞれのネットワークを駆使し、総力戦での会員拡大運動を展開して参ります。新しい仲間との出会いが、明日のちちぶを創ると信じて。


広域団体として

本方針の中で、ちちぶ地域という言葉を多用しておりますが、言わずもがな、秩父市、横瀬町、長瀞町、皆野町、小鹿野町の一市四町を指します。当会の会員も、一市四町より参集しております。(公社)秩父青年会議所の活動エリアは一市四町であることを今一度確認したいと思います。例会はもとより、役員会や委員会の活動を、さまざまなエリアで行う事により、経済活動の基盤であるちちぶ地域を、広く知る事が出来ます。行った事のないエリアがあるのではないでしょうか。訪れた事の無いお店や名所があるのではないでしょうか。一人で行くのもいいかもしれませんが、なかまと共に訪れ、多くの思い出を共有出来たのなら、より深く、未知のちちぶ地域を知る事ができると思います。そこから、新しい何かが見えてくるかもしれません。新しい出会いがきっとあるでしょう。移動に時間がかかりますし、費用も余分に必要ですが、一市四町を駆け回り、青年会議所をアピールし、一年間が終わる頃には、よりちちぶ地域への造詣が深まるような広域活動を展開して参ります。


本年度は、当会発足から55年の節目の年に当たります。今の秩父青年会議所があるのは、過去の秩父青年会議所があったからです。未来を紡いでいく為には、過去を大切にしなくてはなりません。歴史と矜持を大切にしながら、日々の研鑽を重ねてこそ、本当の青年会議所運動が実現できるのです。その為にも、55周年の節目を大切に致します。先人の足跡に感謝すると共に、現在の我々も、志高く運動を行い、明るく豊かな社会を実現する為に、足音高く進んでいる事が伝わるような事業を展開して参ります。

また、本年度は、(公社)日本青年会議所の全国大会への協力も大きな責務です。日本青年会議所の一年間の運動の集大成として全国各地のJAYCEEが一堂に会し、JCだからこそできる青年の運動を全国各地へ伝播することが、全国大会の目的です。副主管として、一つ一つの案件を前向きに捉え、全国大会への参加、協力が、会員一人ひとりの資質向上に繋がり、LOMにも地域にも有益なものになるように、取り組んで参ります。

結びに

青年会議所の使命は、より良い変化をもたらす力を、若者に与える事です。その為の機会を提供し、若者を発展、成長させなければなりません。過去に行った事業の模倣では、より良い変化をもたらす力を会得する経験は出来ません。既存の価値観に捉われる事無く、柔軟で、独創性に富んだ運動を展開してこそ、自らの修練になるのです。私がお預かりする一年のなかにおいて、最も大切にしたいのは、背景と目的のはっきりとした事業展開を行うという事であります。一つ一つの事象に、現在の地域の状況と、自分達の思いが合致しているかを検討し、会員の時間と、会の予算を使う価値があるかどうかを潜心する事に時間をかけたいと思います。事業ありきの計画立案では無く、背景と目的を重視した事業を計画致します。
その事業は、オリジナリティーと情熱に溢れたものでなければなりません。新しいものを産み出すには、不断の努力を必要とします。不安も多くなるでしょう。リスクも抱えなければならないでしょう。会員全員で支えようではありませんか。心を集めて、初めて成り立つ青年会議所の真骨頂は、会員が一丸となって、事業成功のために突き進む時に現れるのです。青年会議所の矜持は、これらの活動に裏打ちされた仲間との絆であります。青年会議所は家庭です。会員は家族です。一人はみんなのために、みんなは一人のために。全会員が団結し、挑戦するのです。55周年の節目を、大きなステップにして、(公社)秩父青年会議所がより華やかに、より素晴らしい団体になるように、会員と共に進んで参ります。

公益社団法人 秩父青年会議所
第55代理事長 太田 将司